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2012-10-30 芥川龍之介『杜子春』を読む

今日はじめて芥川龍之介の『杜子春』を読んだ。この歳になるまで読まなかったのが不思議である。それほどに短く、読みやすい文体だった。きっと読書はつまらないものと感じさせるような教育を受けてきたに違いない。

さて、『杜子春』だが、Wikipediaの当該ページを見れば、ほとんどスクロールのないページであるにもかかわらず、そのラストまですべてネタバレされてしまう。元々有名な作品のはずなので、そのようなことは気にせず書く。

ぼくが読んでいて面白いと感じるのは、杜子春が「正直な暮しをするつもりです」と鉄冠子に答える場面だ。

ぼくには分からなかった。杜子春が正直でなかったことなどひとつもなかったのに、なぜこの場で改まったのか。だって、そうだろう。はじめから親の財産で自分の欲に正直に生き、遊びほうけては金を得て、得たらすぐに使ってしまう。他人の冷たさに気づいたら、わがままに仙人になりたいなどと話しはじめる。言われるがまま、だまって責め苦を受け、父母に心打たれる。こんな正直な男がどこに居ようか。

あたかも良い話のようだが、良いのは杜子春の調子ばかりだ。

ぼくには金をあるだけ使うようなことはできないし、優しい言葉の裏を考えてしまう。好きな子にはいたずらをするし、あまのじゃくそのものだ。

けれど、その物語のまっすぐさは読んでいてほっとするし、話の展開も心地良い。いままでどうして読まなかったのか。それが分からない。

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