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2012-03-08 くすりをのむ

くすりはすごい。ふらふらだったはずなのにいつのまにやら体が軽い。くすりが効いているうちに日記を書いて寝てしまうつもりだ。

最近は余裕がない。昔は風邪を楽しむくらいの余裕があった。むしろ風邪が楽しみで仕方なかった時期もあった。小さいころ、小学生の時分だ。あの頃は誕生日と同じくらいに風邪を引くことを楽しみにしていた。

小さいころのぼくが風邪を楽しみにしていたのは、もちろん風邪をひくと特典があったからだ。風邪はぼくを特別扱いにしてくれたからだ。

ぼくには兄弟が居る。兄弟が居るとどうしても「がまん」をさせられる。弟や妹がごねれば、そちらが優先されるということだ。ぼくはお兄ちゃんだからという理由でしばしばがまんをさせられた。がまんはしたけれど、がまんならなかった。だから昔はよく兄弟げんかをした。特に弟はごうまんで「お前のものはおれのもの」と言わんばかりの振る舞いだった。母は大目に見るようぼくに言った。ぼくはがまんの連続だった。

しかし風邪のときは違った。母はぼくだけのためにポカリスエットや果物の入ったゼリーやヨーグルトなどを買ってきてくれた。ぼくだけのために、だ。普段は牛乳とお茶しか飲まないのに、ほんのり甘いポカリスエットを飲むことができた。それも兄弟たちに奪われることなくだ。弟にラッパ飲みされたジュースではない。ぼくだけのポカリスエットが飲めるのだ。こんなに幸せなことがあるだろうか。

ぼくは風邪が楽しみだった。誕生日も風邪も特別扱いされるという意味では同じことだ。誕生日はケーキで、風邪はポカリスエットだ。風邪ならみんなが勉強しているころ家でテレビを見てすごして、ポカリスエットを飲める。誕生日なら、プレゼントがもらえて、みんなよりすこし大きく切られたケーキを食べることができる。どちらが幸せかなんてぼくには選ぶことができない。誕生日は一年に一回だけど、風邪はうまくいけば何度もひくことができる。

よく仮病を使うようにならなかったと昔のぼくをほめてあげたい。そしてあの頃の風邪の日のうきうきしたぼくをうらやましく思う。ポカリスエットで幸せになれたぼくを。

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