2012-04-14 『人生なんて無意味だ』を読んだ
『人生なんて無意味だ』を読んだ。ネタバレを恐れずに書く。
この物語を簡単に説明すると、ピエールという少年が「人生なんて無意味だ」と主張し、学校に来なくなる。そこでクラスメイトたちは、彼に「人生に意味があることを理解させよう」と、自分たちにとって意味のあるものを集めた「意味の山」を、見せることにする。大切なサンダルや、イエスの像や、処女などからなる山である。結末としては、意味の山を見せたが彼の理解をえられず、腹を立てたクラスメイトたちは彼を痛めつけ自殺(?)させてしまう。
思っていた結末とは違ったけれど面白い内容だった。もっとも笑いながら読めるような話ではなかったけれど……。物語は、人生とは何か・何のために生きるのか・意味とは何かを問いかけ、意味を感じるものが人それぞれに違うこと・相手を理解することや変えることの難しさを教えている。ほとんどホラーとしか思えない意味の山と、そうして苦労して出来た意味の山を最後にピエールに一蹴させて、誰かに意味のあるものでも、他の誰かには意味はないことを示すあたりの残酷さは印象的である。
さて、ぼくが気になったのはピエールである。ピエールは物語の導入や結末に影響する重要人物である。
ぼくはピエールのことを残念に思う。もしピエールがあと数年生きていたら、その後のピエールがどうなったのだろうかと気になって仕方ない。無意味でもピエールは死のうとしていたわけではないし、なにもなければあのまま生きていたと思うのだ。物語のように簡単に月日は過ぎてしまう。その過程でピエールはどうやって生きたのだろう。
ピエールは「人生なんて無意味だ」と言わなくなったのではないかと、ぼくは思う。無意味だと言うこと自体が無意味だと気づくと思うのだ。そして就職などのタイミングで学校に行かなかったことで生まれるハンデキャップに苦しむのだ。ろくに就職できず、どこかで自殺するかもしれないし、妥協を繰り返しながら、生きていくのかもしれない。
ピエールは悪くなかった。ただ自分の考えを主張しただけにすぎない。他人の価値感についての認識が甘かったことや、言い方が悪かったところもあるけれど、それくらいのことは誰しもあるものだ。
ぼくがピエールを気にするのはそれが自身にもっとも近いキャラクターであるからに他ならない。ぼくは人生に意味を感じられず、学校に行かなかった時期があり、自殺も考えた。ぼくは就職に悩み、そしていまも自分がどうなりたいのかを求められるたびに、ひどく悩む。
自分の人生の意味に対する答えは、自分の他には誰も持っていない。それぞれにとって意味のあるもの、価値観は違うからだ。それでもぼくはとりあえず生きてみることを決めたし、いまも生きている。それには意味があったと信じたい。これは物語の最後と重なる部分がある。物語の主人公とは違い、ぼくはピエールにぼくの人生の意味を求めたりはしない。そのときのピエールにとって人生は無意味だったかもしれないけれど、それでも生きてピエールには人生の意味を探してほしかったと、そう思うのだ。
45 min.